リハーサル中の鈴木忠志氏
11月1日から12月25日まで北京で開催されている「第6回シアター・オリンピックス」で、日本を代表する演出家・鈴木忠志氏が演出する舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」と日中韓3カ国語版「リア王」が上演されている。15日夜、長安大劇院の会場は、両側通路に立ち見客が出るなど大盛況。世界で絶賛を浴びる鈴木氏の集客力が示された。鈴木氏の演出の下、英国のシェイクスピア作の悲劇「リア王」を、中国、日本、韓国の役者が、ロシアやドイツの音楽に合わせて演じる同作品。うち、主人公のリア王を務めるのは中国の俳優田冲(25)だ。鈴木氏によると、「リア王」を外国人の役者が演じるのはこれで6度目で、うち田沖は最も若い役者だという。京華時報が報じた。
役者は「エネルギー」でコミュニケーション
同作品でコラボする日中韓の役者は、言語の壁をどのように乗り越えているのだろう。鈴木氏によると、「私が主宰する劇団SCOTには、8カ国のメンバーが集まっている。普段は、みんな英語でコミュニケーションを取っている。しかし、舞台上では、それぞれ母語を使うように指示している。なぜなら、シェイクスピアのストーリーは誰でも知っており、同じ訓練を受けているため、同じエネルギーを持っているから。舞台上では、そのエネルギーを通してコミュニケーションを図っている。遠回りではあるが、コミュニケーションが問題になることはない」とし、「舞台の魅力は、文化や言葉が違っても、共通の思いがある点」と語る。
伝統文化を世界の財産に変えてこそ価値がある
「シラノ・ド・ベルジュラック」と同じく、「リア王」でも、鈴木氏らしさが満載となっており、役者は皆裸足で演じるため、靴の音は全く聞こえてこない。そのような作品を見ていると、観衆は劇のストーリーの世界へ引き込まれていく。主役か脇役かに関わらず、各役者の語る台詞は美しく力がこもっている。そして、その迫真の演技、アクションは、動く絵のように華麗で上品だ。
日本の伝統的な演出法を基礎にしている鈴木氏は、「どの民族にも優秀な伝統文化がある。しかし、その伝統文化自体には価値がない。自分達の有している文化をいかに世界の財産にするか。それが、アーティストの使命」と、ただ単に伝統を継承しているわけではないことを強調している。
中国の舞台関係者も絶賛
鈴木氏は11日と12日、北京人民芸術劇院で2時間に渡る講座を実施。体の動きなどを教え、中国の役者も手ごたえを感じていた。中央戲劇学院の郭富民教授は、「鈴木氏をとても尊敬している。中国の演劇界の一員として、中国の舞台で鈴木氏の作品をもっと見たい。また、さらに多くの中国の学生を訓練してほしい。その価値は計り知れない」と絶賛した。(編集KN)
「人民網日本語版」2014年11月18日
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