本誌記者 曾文卉
G20財務相・中央銀行総裁会議が「口論」や「駆け引き」の中で閉会した。経済回復という戦略において、各加盟国の間には大きな食い違いがあった。
欧米の「食い違い」の由来
アメリカはより大きな規模の経済刺激策を主張し、EUは国際金融システム改革の推進、監督管理の強化を強調した。
ガイトナー米財務長官は、経済成長刺激資金が各国の国内総生産(GDP)の2%に達するべきだと提案、EU諸国はこれに反論した。メルケル独首相とサルコジ仏大統領は、すでに十分に経済刺激を行っており、当面最も重要なことは、金融の監督管理を強化し、今後同じような経済危機の再発を防ぐことであると表明した。ホスト国のブラウン英首相は折衷の態度をとった。「BRICs4カ国」は、世界の重大な政策決定により多く参与し、国際金融システムにおける発展途上国の発言権を拡大するよう明確に求めた。
中国人民大学経済学院国際経済学部の黄衛平教授は本誌のインタビューに対し、「諸国間の食い違いは各国が直面している経済状況の違い及び今回の金融危機の中で引き受けた責任の違いによるものである。今回の金融危機を引き起こしたアメリカは古い金融体制の最大の受益国であるため、金融体制を大きく変えることは望んでいない。ドイツは経済状況が相対的に良いため、金融監督管理の強化に注目している。イギリスは折衷の態度をとり、アメリカを世界金融システムの中核とする体制が続いていくことを望まない一方、経済情勢悪化のため、自ら大きな役割を発揮する可能性も小さい」と語った。
中国社会科学院世界経済・政治研究所国際金融研究室の孫傑研究員は、「今回の金融危機の源はアメリカのサブプライムローンにあり、アメリカの金融監督管理の不足によって危機が蔓延し、影響が拡散しつつある。ユーロ圏諸国は金融監督管理の面ではアメリカより厳格であったものの、免れることはできなかった。ヨーロッパ経済の衰退はアメリカが引き起こしたもので、“ヨーロッパは巻き込まれたのだから、金融の監督管理を強化するのは当然”という考えもある。このほか、ヨーロッパ経済は金融危機による影響がやや小さく、国際金融システムの改革を要求する余力と願望があり、この機に国際通貨システムにおけるユーロの地位を強化し、国際通貨システムの多元化を実現させようとしている」と、その考えを述べている。
さらに孫研究員は、アメリカの視点から分析すれば、「世界的な経済衰退が発生したときには1つの大国が真っ先に拡張的経済政策を実行する必要がある。しかし、真っ先に経済刺激策を始動させる国は経済回復のための一定のコストを引き受けることになる。もしアメリカが独自で拡張的な経済刺激策を実行し、その他の国が何もせずに利益を受け、アメリカの拡張で輸出が増えることになれば、アメリカの経済回復のコストは高すぎる。このため、アメリカは他国に対して“助け合い”を望み、自らが進めている独自の拡張と“先導的拡張”のコストダウンを図ろうとしている」と説明する。
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