――以前、「中国の平和発展」について外国の中国研究家を取材したことがありますが、彼らの認識は、中国は古来防衛を主とし自ら他国を侵略したことは少ないというものでした。中国の軍隊の使命も同様でしょうか?
その通りだ。中国の国防戦略、国防白書はまさに積極的防衛を提倡しており、この点は西側も否定していない。古代、特に近代以降、中国は防衛を主とし、大規模な進攻を行っていないし、海外に基地を持つことを宣言もせず、他国の利益を侵害するための足がかりも必要としていない。米国海軍のように、世界の16の主要水路を支配下に置くと宣言したりもしない。ジブラルタル海峡、スエズ運河、パナマ運河といった重要な水路は米国海軍の支配下に入ろうとしている。米国は世界を進攻し支配権を握る態勢にあるが、中国は違う。世界のどこかを支配下に置くなどと宣言することはせず、これまでずっと防衛の態勢を取り、限られた地域で自己の利益を実現し、自己の利益を守ってきたのであって、世界範囲の利益は追求していない。
――かつて、「軍隊の最終的な本質は武力で国家の安全を守り、抑止力を持つことだ。抑止とは戦争を行うための戦略ではなく、平和維持のための戦略である」とおっしゃっていましたが、中国の軍隊の抑止力はどの程度だとお考えですか?空母試験航行は抑止力増強の表れでしょうか?
中国の軍隊は一定の抑止力を持っている。今日の世界世論の中国に対する尊重には、実際のところ中国の武装力への尊重も含まれている。中国の抑止力には、陸軍、空軍、海軍、第二砲兵(戦略ミサイル部隊)といった兵種の発展といった国防力の発展が含まれ、世界的にも一定の尊敬を集めている。総参謀長や海軍司令官など中国軍の指導者が訪米した際に受ける高い待遇は個人に対するものではなく、軍事力に対する尊重である。この点はとても強く印象に残っている。
中国軍の発展が一定の尊重を得ているということは、一定の抑止力を持つようになったということだ。しかし中国軍の抑止力は中国の経済地位や経済発展にふさわしいものではなく、引き続き増強すべきだということも意識しておくべきだ。強調しておきたいのは、中国はこれまで「抑止」に西側が発展途上国を威嚇する手段というレッテルを貼ってきたが、その抑止力を手にした今は、中国のような発展途上国にとって抑止力は自己安全防衛の手段にもなるということだ。戦争をするということではなく、危険を冒す前の時点で相手を制止するのである。「こちらは自分の利益を守るだけの力を持っているから、危険を冒さないほうがいい」。こういう方法で戦争を回避するのだ。この角度から見ると、中国は一定の抑止力を備えた。しかしまだ足りない。引き続き努力が必要だ。
この努力は軍隊の長期建設において不足している部分に目を向けるべきだ。中国軍は長い間陸軍を主として核心力を構成してきた。中国軍の過去の栄光はほとんどが陸軍によるものだ。しかし今日の多様化した軍事任務、つまり情報化条件下で一部戦争に勝利するためには、安全と軍事に対する要求はこれまでとはまったく異なる。これまで不足していた分野、すなわち海軍、空軍、第二砲兵に重点を置くべきだ。中国軍は今後主としてこれらの面で抑止力を強化するべきであり、そうすることで初めて完全な抑止態勢を取ることができる。
空母試験航行は抑止のうちのごく一部にすぎない。今、空母の抑止力を語るのは時期尚早だ。現在進水している空母は試験艦であり、船員やパイロットの訓練に用いるもので、戦闘能力となるものではない。したがって空母の抑止について言及するのはかなり先の事になるだろう。
「北京週報日本語版」2012年3月13日 |