世界大学生体操の元チャンピオン・張尚武さんは、現役引退後、地下鉄の通路でアクロバット芸を披露して生計を立てている。元重量挙げ全国チャンピオンの鄒春蘭さんは、サウナでアカスリの仕事をしていた。現役を引退したアスリートが生活苦に陥っていることに、社会から関心が寄せられている。全国政治協商会議体育界分科会で、数人の議員から、「怪我によって引退を余儀なくされた元スポーツ選手に対する社会保障の強化」を望む意見が出された。国家体育総局の楊樹安・副局長は、「張尚武氏は、あくまでも個人的な事例にすぎない。中国のアスリートは、『世界一幸せなアスリート』だ」との見方を示した。北京の日刊紙・京華時報が報じた。
▽障害が残ったアスリートの多くが障害等級の認定外
スピードスケートの名手で元世界チャンピオンの葉喬波委員は、現行の「優秀アスリート障害互助保険弁法」は、練習中および試合中にアクシデントが生じ、身体障害が残った現役アスリートに対して保障するにとどまっている指摘。しかし、障害が残ったアスリートの多くが、障害等級が認定されておらず、相応の待遇を受けられないのが現状という。葉委員は、アスリートは危険に見舞われる可能性が高いことから、関連部門が障害を持つ元アスリートに対する社会保障を強化することを検討し、問題解決に取り組むよう希望した。
▽商業保険会社、ハイリスク競技種目の保証引受を拒絶
国家体育総局体操運動管理センター元主任の高健委員は、「体操運動管理センターはこれまでに、国内の保険会社数社と、体操選手の保険に関して話し合ったことがある。しかし、どの保険会社も、体操はハイリスク種目であることから、保証の引き受けを拒んだ。体操の練習には高いリスクが伴う。世間の人々は、誰が世界チャンピオンになったか、誰がオリンピックで金メダルを獲得したかには注目するが、多くのアスリートが怪我によって早いうちに引退している事実を知らない。引退した人の多くは、障害等級の認定を受けられず、相応の保障を享受できない状況にある」と話した。
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