施策の提案
資本市場への投資による資金価値増大が当面不可能だとすると、問題はまた原点に戻ってしまう。養老金資金は結局のところどのように資金価値の維持・増大を図ればいいのだろうか?
対外経済貿易大学公共政策研究所首席研究員の蘇培科氏は、「実のところ今一番重要なのは、一年満期定期預金基準金利が3.5%なのに養老保険の投資収益が2%しかないのはなぜかをきちんと考えることだ」と言う。
蘇培科氏の考えでは、今、養老金資金の運用収益率が一年満期定期預金基準金利より低い主な理由は、養老金給付を柔軟に行えるように管理者が大部分の資金を普通預金に預けているからだ。
「しかし管理部門が少しでも計算能力があれば、いったいどれだけの収支があったら残高が出るのか試算できるはずだし、残高が残る期間もおおよそ把握できる。この残高部分の資金を定期預金に回すことは可能なはずだ」。蘇氏は、養老金残高が定期預金ではなく普通預金に長期預け入れされているのは、現在中国の養老金の運営管理機関が組織等級的に低いからだと考えている。
全国には2000余りの養老金管理機関があるが、大部分が県級や市級の社保取扱機関に分散しており、養老金の資金は県や市の財政専門口座に埋もれてしまっている。これほど多くの管理主体に対する監督管理は明らかに効果を欠き、運用管理効率はおのずと低くなる。
蘇培科氏は言う。「養老金管理の当面の急務は全国統一運営管理を早急に実現し、運営管理機関の等級を高め、すべての労働者を統一の社会保障制度に組み込み、公務員と企業従業員の養老保険待遇が違うという『二重制』を打破し、公開かつ透明な運営を行うことであり、株式市場でリスクを冒すことではないはずだ」。
一方、鄭秉文氏は次のように考えている。養老金資金運用制度は必ず改革しなければならないし、今からでも直ちに社会保険基金運用体制改革をスタートするべきだ。改革は次の3ステップに分けて行うことができる。第1ステップは臨時段階で、養老基金の資金価値維持の必要性を満たすため、1~2年以内に基金全額に対して特種非公募債を発行し、銀行預金を全て解約する。
第2ステップは過渡段階で、記帳式養老保険大口口座方式を試行する。これは企業負担の保険料と従業員が自己負担する保険料を全て個人口座に預けるるというもので、国が養老基金を集中させて「資金プール」化するのに都合がよく、集中的運用管理が可能となる。これをベースにして、全国養老保険基金運用管理機構を専門に設け、この機構を通じて集中的に運用し、運用体制の市場化と資産配置の多元化、全体収益率の向上を目指した多元的な運用戦略を実施する。
第3ステップは改革深化段階で、収益率が低いという問題を制度面から徹底的に解決する。
鄭秉文氏は言う。「もし現行制度を改革しなければ、10年後になっても、養老金資金の目減りというばつの悪い状況は変わらないままだろう」。
「北京週報日本語版」2012年3月6日
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