本誌記者 蘭辛珍
北京市民の呉暁秋さんは人民網が行った「2012両会調査」アンケートに真剣に記入し、「提出」ボタンをクリックした。最も関心のある項目の選択肢のうち、呉さんが最初に選んだのは「社会保障」だった。
「みんな自分の養老保険や医療保険など社会保障に関心を持っているし、政府に社会保障をもっと良くしてほしいと思っている」と呉さんは言う。
現段階の調査によると、昨年最も注目されていた所得配分問題は今年二位となり、社会保障が人々の関心を最も集める問題になっている。そして今、社会保障に関して最も論議されているのが養老金(日本の年金にあたる)の資金価値維持と増大についての問題だ。
人力資源・社会保障部のデータによると、2011年末、中国の社会保険基金5種(養老、医療、失業、労災、出産)の累計残高総額は2兆8700億元で、そのうち養老保険は1兆9200億元であった。今のところ、養老保険の資金運用は銀行預金がメインで、ほかに国債での運用も若干行っている。
内蒙古自治区武川県可可以力更鎮巨字号村で、養老金受給用口座カードの入った封筒をうれしそうに開封する王文林さん(任軍川撮影)
中国社会科学研究院世界社会保険研究センターの鄭秉文主任によると、この運用戦略だと、インフレ率を除いた場合の年間収益率はマイナスになり、資金は目減りしている。鄭秉文氏は「社会保険基金の名目収益率は2%に満たない。2011年の中国CPIが5.4%だったから、インフレ率を除いた実質収益率はマイナス3.4%。これで計算すると、2011年の中国の社会保険基金残高2兆8700億元について1000億元近くの損失ということになる」と語る。
社会保険基金が目減りすれば、養老金の満額支給が危うくなる。どのようにして資金を管理し、より多くの収益を上げるのか……それには明らかに戦略を練ることが必要だ。
昨年12月15日、中国証券監督管理委員会の郭樹清主席は養老金資金を株式投資するよう呼びかけ、さらに中国社会科学院が発表した『2011年中国養老金発展報告』でも、国が投資管理会社を設立して基本養老保険基金の資金を運用することを提案した。しかしこうした提案は激しい議論を引き起こし、支持する人もいる一方で反対する人も多い。
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