本誌記者 繆暁陽

「現在中国が行っている医療保険改革において、政府の力の入れ方はまだ大きいとは言えない。技術と大量の薬品の導入にともなって、医療費は次第に高くなり、基本医療保険では患者の治療費ニーズを完全に満たせないことがしばしばだ。そのため、商業保険の活用を検討しなければならない」。全国政協委員で天津市腫瘤研究所副所長の孫保存氏は４日、北京会議センターで本誌記者の取材を受けた際、こう語った。

商業保険は国民皆保険体系の中でどんな役割を果たすことができるのか？梅地亜中心（メディアセンター）で５日に行われた「政協委員、都市化と新農村建設の協調的推進を語る」をテーマとした記者会見で、全国政協委員で中国人民保険集団股份有限公司の呉焔総裁は、金融保険ツールを活用すれば、政府の投入も国民の負担も増やさずに都市・農村住民の医療保障基準額が広がり、国民全員の医療保障水準を大幅に向上することができる、と述べた。

呉氏は今回の政協会議で『商業保険の活用による国民皆保険体系構築の強力推進に関する「湛江モデル」 』という提案を行った。「湛江モデル」について、呉氏は記者に次のように語った。「ここ数年、広東省の湛江で新しい医療保障協力モデルを推進してきた。このモデルは、政府主導の下で、都市住民と農村住民のステータスの境目を打破し、都市・農村住民医療保険の個人納付保険料のうち１５％を商業保険の加入資金にまわして高額医療補助制度を実施し、大病時の補充医療保険を商業保険会社に委ねるというものだ。これにより、湛江市で保険に加入している住民の医療保険給付最高額は、もとの２万元から都市部住民は８万元、農村部住民は１０万元に上がった」。

前出の孫保存氏は「経済条件がよい人は商業医療保険に加入して基本医療保険の補充にするよう提倡している。こうすれば大病時の医療保険リスクにも強い」と語る。

国民皆保険体系構築への商業保険活用の意義について呉氏は、新医療改革制度は実施後二年で成果をあげているが、実際の運用段階では、都市と農村の医療保障格差拡大、医療保障水準の低さ、社会保険や衛生など関連部門の取り組み不足、庶民の医療機関受診の難しさなど、まだ多くの問題が現れている。医療保障体系を整備する過程で、商業保険という独特の社会資源を十分に活用して市場化した運営メカニズムを構築すれば、都市と農村を一体化した国民皆保険体系構築を推進する上で、体制面で重要な意義がある。

国民皆保険体系構築において商業保険をさらに推進することについて、孫氏は次のような提案を行った。「最初は一部の高所得層しか商業保険に加入できないだろう。しかし医療を受ける過程で直面するリスクは、高所得層よりも中低所得層のほうが高い。政府は保険会社の商業保険業務展開を助成すると同時に、商業保険に加入する低所得層に一定の補助を行うべきだ。そうすれば、低所得層における商業保険のカバー範囲をできる限り拡大することができる」。

商業保険を活用した国民皆保険体系の構築について、呉氏はその提案の中で次のように述べている。

まず、医療保険体系構築において、政府が管理可能な社会資源を十分に動員し、商業保険会社が積極的に社会保障体系構築に参画するようにするべきである。

次に、商業保険が医療保険取扱に参入する際の規制をさらに取り除き、参入規制を緩和し、効果的な供給を増やす。さらに政府部門の職能統合を推進し、健全で統一された社会医療保障体系を構築する。政策を統一し、都市部の会社従業員、都市部住民、新型農村合作医療（大病罹患時を主な給付対象とした政府主導の農民医療互助共済制度。個人の保険料納付、地域扶持、政府資金援助で資金調達する。加入は任意）の基本医療保険制度を合併し、統一的な医療保障体系を構築し、統一的な政策と管理を実施し、都市と農村の社会公共サービスの均等化と共有を実現し、都市と農村の二元化構造を改善するべきである。

呉氏はこのほかにも、保険機関が基本医療保障をベースに医療保険業務を開拓できるよう支援・奨励し、経済と社会の発展不均衡という状況下で、多層的で多様化した社会医療保障ニーズに応え、公平で効率的な統一を体現しなければならない、と提案している。

「北京週報日本語版」2011年3月11日