投資と消費の関係を調整する。内需拡大の方針を堅持し、重点的に消費需要を拡大する。所得分配制度の改革が深められれば、所得格差の拡大という矛盾が緩和されるだけでなく、消費需要の効果的増大にもつながる。さまざまな施策を講じて、都市農村住民の所得収入、とりわけ中低所得者層の所得を増やすことに努める。最低賃金制を合理的に調整した上で、それを厳格に実行し、最低時給の基準を徹底させ、企業の賃金分配に対するコントロールと指導を強化し、賃金の正常な引上げメカニズムと支給メカニズムを確立し、健全なものにする。今年、各地方は最低賃金制と最低時給基準の実施状態について、総点検を一度実施することとする。引き続き公務員給与制度の改革、公務員の所得分配秩序の規範化及び関連人員の待遇調整に関する政策・措置を徹底化する。とりわけ、農村の消費需要を拡大し、農民の収入増加・負担軽減の促進につながる政策・措置を真剣に実行し、農村における商品流通と市場体系の整備を強化し、農村の消費環境と条件を改善する。消費政策を充実化し、観光や文化、リゾート、健康増進などの消費のホットスポットを積極的に育成し、住民のスポット消費を拡大する。
固定資産投資の適正な伸びを保ち、投資構造の最適化に力を入れ、投資のパフォーマンスを向上させる。引き続き土地使用の審査・許認可と貸出審査を厳しくし、業種別の事情に応じて、建設プロジェクトの用地や環境保護、省エネ、技術、安全などの市場参入基準を適切に引き上げ、さらにそれを厳格に実行する。新規プロジェクトを厳しく規制し、特に都市整備の規模を抑制する。経済社会の大局と長期的発展に資する重要な大型プロジェクト建設を強化し、大型水利施設やエネルギー資源基地、幹線鉄道、国道主幹線など重要基盤施設の整備を速める。民間資金が農業・農村や社会諸事業、自主的創造革新、資源の節約、環境保護、中西部地区へより多く投入されるよう積極的に誘導する。投資体制の改革を深化させ、重要投資プロジェクトに関わる政策決定制度と責任追及制度を完全なものにすべきである。
不動産業は経済の発展や人民大衆の居住条件の改善にとって重要な役割を果たすものであるため、不動産業の持続的で健全な発展を促進しなければならない。第一に、膨大な人口を抱えるにもかかわらず、耕地が少ないという国情及び現段階における経済発展の水準を踏まえ、合理的に企画し、科学的に建設し、適度な消費を目指し、省エネ・用地節約・環境保全型の建築を発展させ、中国の特徴をもつ住宅建設と消費パターンを形成する。第二に、不動産業は広範な大衆向けの一般分譲住宅を重点的に発展させるべきである。政府は低所得家庭の住宅問題に特段の配慮を払った上で、その解決に向けて援助の手を差し伸べなければならない。財政や税制などの面から政策的支援の度合いを大きくし、低価格賃貸住宅制度を確立し、それを健全化させる。また、エコノミー住宅制度の改善と規範化を図らなければならない。第三に、政府による規制と市場メカニズムの二つの手段を正しく運用して、不動産投資の合理的な規模を維持し、分譲住宅の供給構造を最適化し、住宅価格に対する監督・管理と規制を強化し、不動産価格の急騰を抑制し、合理的な価格水準を保つ。第四に、不動産市場の秩序を突っ込んで整頓し、規範化させ、不動産市場に対する監督・管理を強化し、法に則って不動産の開発や取引、仲介などの諸過程における法律・法規違反の行為を懲罰する。地方の各級政府は不動産市場に対する規制と監督・管理において確実にその責務を全うしなければならない。
(二)現代農業を発展させ、社会主義新農村の建設を推し進める
農業、農村、農民の問題は、小康社会の全面的な建設及び現代化事業の大局に関わる重要な課題である。今年の「三農」課題への取り組みは、現代農業の発展を速めることを重点とし、社会主義新農村の建設を着実に推し進めることである。一、食糧生産を安定的に発展させること。基本農地を着実に保護し、穀物作付面積を安定的に維持し、食糧品種の構造を最適化させ、単位面積収穫高の増加に力を入れる。食糧の生産、消費、在庫及び輸出入に対するモニタリングやコントロールを強化し、食糧の安全をめざす早期警報システムを確立し、完備させ、食糧市場の安定を維持する。二、農業の総合的生産能力を着実に高めること。農業用施設の整備を速め、農業技術や設備を改善し、農業面における科学研究と技術普及の強化に取り組み、社会化サービス体系を充実させ、農業の防災・減災能力を増強する。動物疫病予防・対策体系の整備を強化する。三、農村のインフラ整備の強化に取り組むこと。農村の水利施設、道路、送配電網、通信、安全な飲み水、バイオガスなど施設の整備を急ぐ。全国の大中型ダムや重要な小型ダムの老朽化対策に全力を尽くし、二、三年かけてこれをほぼ完成させる。安全な飲み水施設の整備を速め、今年さらに三二〇〇万人分の安全な飲み水を保障する。四、多ルートを通じて農民の収入増を図ること。栽培・飼育・養殖業と林業の収入増に努め、農村部の第二、三次産業、特に農産物加工業を鋭意発展させ、農業の産業化経営の推進に大いに力を入れ、県域経済を盛んにし、農民の就業及び収入増のルートを広げる。農民就労者問題の解決をめざした様々な政策措置を真剣に徹底させる。貧困脱却扶助開発の度合いを大きくし、農村の貧困者数をさらに減らす。五、農村における実用人材陣の整備と人的資源の開発を大いに推進すること。農村労働力への研修訓練を強化し、農民の科学的な栽培・養殖技術水準と就業転換の能力を高め、新しいタイプの農民を育成する。
現代農業を発展させ、新農村の建設を推し進めるには、政策、投入、科学技術、改革に依拠しなければならない。一、農業向けの支援・優遇策を徹底し、充実させるとともにそれを強化すること。穀物作付農家向けの直接補助金、良質種子補助金、農機具購入補助金と農業生産財の総合的補助金を増やす。引き続き食糧の最低買付価格政策を実施する。財政難の県・郷や食糧主産県への支持の度合いをさらに大きくする。二、農業や農村への投入を増やすこと。国のインフラ整備や社会諸事業発展の重点を着実に農村地域に移し、今年の農業支援に振り向ける財政投入や農村の建設に用いる国の固定資産投資及び土地譲渡収入などの伸び幅を引き続き前年度より大きくする。「三農」に対する中央財政の投入を三九一七億元と計上し、前年度より五二〇億元増とする。農業保険を鋭意発展させ、農業の政策的保険の試行範囲を拡大する。三、農業の科学技術の進歩を促すこと。農業科学技術の創造革新能力の向上に取り組み、農業科学技術に関わるプロジェクトをサポートし、農業科学技術の成果の実用化を加速する。末端における農業技術の普及・サービス体系を充実させ、村や農家へ農業科学技術を普及することを奨励する。四、農村の総合的改革を全面的に推し進めること。郷鎮機構、農村義務教育及び県・郷財政管理体制などの改革を急ぎ、精鋭化や効率化をめざした農村の行政管理体制、政府の保障による農村義務教育体制、都市と農村をカバーする公共財政制度を逐次構築する。それと同時に、土地収用制度や林地の集団所有権制度などの改革を推し進め、農民からなる専門協同組織を積極的に発展させる。郷・村の債務をひきつづき整理し、解消する。
社会主義新農村の建設を推し進めるには、農村経済の発展や農民の収入増に重点を置く。あくまでも農村基本経営制度の安定化と健全化を図り、実際から出発し、地域の特色を生かすという原則を堅持し、終始農民の自由意思を尊重し、農民の権益を守り、形式主義と強制命令を戒めなければならない。
(三)省エネ・原材料消費の低減、環境保護、土地の集約的利用に大いに力を入れる
今年は、省エネ・原材料消費の低減、環境保護、土地の集約的利用を経済成長パターンの転換をはかる突破口、又は重要な手掛かりとしなければならない。省エネと環境保護の面において、次のような仕事に重点的に取り組む。一、エネルギー消費と環境保護の基準を完備させ、厳格に実施すること。新規プロジェクトについては、必ずエネルギー消費効率審査と環境アセスメントを行わなければならず、省エネと環境保護の基準に合致しないものであれば、着工、建設してはならない。既存企業については、整頓・改善を行っても基準を達成しなければ、法に則って、操業停止、閉鎖を実施すべきである。二、立ち遅れた生産能力を断固淘汰すること。「第十一次五ヵ年計画」期においては、五○○○万キロワットの小型火力発電設備を閉鎖、停止し、今年は、一○○○万キロワット閉鎖、停止しなければならない。五年間に立ち遅れた製鉄生産能力を一億トン、立ち遅れた粗鋼生産能力を五五○○万トン淘汰し、今年は、それぞれ三○○○万トンと三五○○万トンを淘汰する。セメント、電解アルミ、鉄合金、コークス、カーバイドなどの業種の立ち遅れた生産能力の淘汰に力を入れる。三、重点業種や企業に特に力を注ぐこと。鉄鋼、非鉄金属、石炭、化学工業、建材、建築などの重点業種、及び標準炭ベースでエネルギー年間消費量が一万トン以上の重点企業の省エネ・廃棄物排出削減事業を強化する。低効率の石炭燃料の工業ボイラー(窯炉)の改造、区域コジェネレーション(熱電併給)などの重点プロジェクトを全面的に実施する。都市部の公共交通機関の優先的発展を堅持する。四、省エネ・環境保護政策体系の健全化をはかること。市場メカニズムの機能の発揮を重視し、価格、財政・租税、融資などの経済的手段を総合的に運用して、省エネ・環境保護事業を促進する。重要な資源関連製品の価格及び汚染物質排出料徴収に関わる改革を深化させ、資源税制度を充実させ、鉱物資源の有償使用制度を健全化させる。五、省エネ・環境保護技術の進歩を加速させること。省エネ・廃棄物排出削減を主要目標とする設備更新と技術改良を積極的に推し進め、企業が省エネ・環境保護にプラスになる新設備、新生産プロセス、新技術を採用するよう導く。資源の総合利用とクリーン生産を強化し、循環経済と省エネ・環境保護産業を大きいに発展させる。六、汚染対策と環境保護の度合いを大きくすること。国債資金と中央予算資金を増やして、都市部における生活汚水、ゴミの処理及び危険廃棄物の処理施設の整備に充てる。引き続き「三河・三湖」(淮河、海河、遼河・太湖、巣湖、滇池)、松花江、三峡ダム地区及び上流区域、南水北調の水源地並びに沿岸地域等重要流域の汚染対策を引き続き立派に行う。汚染を招く企業と都市部の汚染物質の農村への拡散を禁じて、農村部における面的な汚染の規制をはかる。七、法の執行に対する監督・管理を強化すること。更に効果的な省エネ・環境保護監督管理体系を確立し、法に則って法律・法規に違反するさまざまな行為を断固として処分する。八、省エネ・環境保護の目標責任制を真剣に実施すること。科学的で、完ぺきな、統一した省エネ・廃棄物排出削減指標体系、監視体系、チェック体系の構築と充実化を急ぎ、厳格な問責制を実行する。
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