対外貿易の成長パターンの転換を鋭意推進した。輸出入総額は一兆七六〇〇億ドルに達し、前年度より二三・八%増となった。輸出入品の構成はさらに最適化され、機電製品とハイテク製品の輸出はそれぞれ二八・八%と二九%伸び、独自性や付加価値率の高い一般貿易の輸出ウェートが上昇する一方、高エネルギー消費・高汚染製品の輸出が過度に増加するといった傾向は効果的に抑制されている。通年の外商直接投資の実質導入額は六九五億ドルであった。企業の「海外展開」では新たな成果をあげ、年間の対外直接投資額(非金融部分)は一六一億ドルに上り、前年度より三一・六%伸びた。
経済・社会の発展で成果を上げたが、一方では、少なからぬ困難やチャレンジにも直面している。深層部に目を向けると、経済構造の不合理や成長パターンの粗放型、体制・メカニズムの不備などの問題がまだ抜本的に解決されていないことが分かる。当面の情勢から見れば、経済運営はマクロ規制の所期の方向に向かって進んでいるが、その基盤が強固なものにはなっておらず、経済成長のために払われた代価が大きすぎ、不安定・不調和の要因がかなり多く存在している。その内、比較的際立っている問題は次の通りである。一つは、農業基盤の脆弱な状況はなお根本的に変えられておらず、農民の持続的な収入増が難しさを増していること。農業分野の災害抵抗力が弱く、農業関連の科学技術の水準が高くない。食糧生産の効率が相対的に低く、農民に穀物作付補助を与えて収入増を図る効果が弱化しており、農民の出稼ぎ収入の増大は複数の要素の影響を受け、農民の収入増を制限する体制上のいくつかの障害がまだ取り除かれていない。二つは、投資の反動、またそれによってもたらされる経済の振れによるリスクが依然として存在していること。投資の増幅はなお高い水準を保っており、建設中のプロジェクトの規模は依然として過大であり、新規着工のプロジェクトもかなり多く、投資の加熱をもたらす体制やメカニズム上の問題はまだ根本的に解決されておらず、一部の地方や分野では投資拡大の原動力が依然として大きい。銀行系統の過剰な流動性は今後も続く見通しで、融資の拡張能力と貸出性向がまだかなり強い。対外貿易の黒字額は拡大を続けている。三つは、省エネ・排出削減の情勢が厳しく、資源環境面の矛盾が日増しに先鋭化していること。二〇〇六年の初めに定められた省エネ・排出削減の目標を達成できなかったが、その主要原因は次のようなものである。産業構造の調整がなかなか進まず、サービス業の占める割合が比較的小さく、重工業、とりわけ一部の高エネルギー消費・高汚染業種の拡張テンポが依然として速すぎ、本来淘汰されるべきかなり多くの立ち遅れた生産能力がいまなお市場から退出していないこと。関連の法律法規や基準と管理制度が整備されておらず、相互の整合性がなく、また省エネ・排出削減への投入が不十分で、省エネ・排出削減を支える財政・税制、価格、金融などの面の政策・措置がまだ十分に実施されていないこと。かなり多くの企業は、省エネ・環境保護向けの技術改良を実施する意欲が弱く、一部の省エネ・環境保護型プロジェクトが完工してその役割を生かすまでには、一定の期間を要すること。厳正な法律執行はまだ徹底されておらず、法律違反に伴う代価が安いため、資源の浪費や環境破壊などの法律法規違反行為は取り締まっても後を絶たないこと。一部の地区は省エネ・環境保護の重要性と逼迫性への認識をさらに高める必要があり、経済成長を重んじる一方、環境保護を軽視する現象が存在していること、などである。このため、二〇〇七年度の省エネ・排出削減の任務も依然としてかなり重いものとなろう。石炭、電力、石油、運輸の情勢がいくらか改善されているものの、地域性、時間帯性、構造性需給の逼迫状態はいまなお続いている。四つは、社会問題が依然として際立っており、社会の調和を促す任務が極めて重いこと。雇用情勢は相変わらず厳しく、労働力の総量的過剰と構造的不足の問題が並存し、大卒生就業のプレッシャーが増大し、一時帰休者・失業者、とりわけ「四〇代、五〇代」の人々や「ゼロ就業家庭」(就業年齢に相当する家族構成員の全員が失業状態にある家庭を指す)の再就業問題は相変わらず際立っている。社会保障のカバー範囲はかなり狭い。就学難や学費の高騰、診療難や医療費の高騰への不満を訴える大衆の声は非常に大きく、食品安全、医薬品安全、所得分配、社会治安、安全生産などの問題は依然として際立っている。企業の体制転換、都市整備に伴う家屋立ち退きや土地収用、環境保護などの諸方面にも大衆の利益を侵害する問題が存在している。旧革命根拠地、少数民族地区、辺境地区、貧困地区における貧困脱却はかなり厳しい任務となっている。以上の諸問題に対しては、積極的に対策を講じ、それを真剣に解決していかなければならない。
二、二〇〇七年度の経済・社会発展の全般的要請と主要目標
二〇〇七年度の経済・社会発展の活動を進めるにあたって、鄧小平理論と「三つの代表」の重要思想を指針とし、中国共産党第十六回全国代表大会と十六期三中、四中、五中、六中全会の精神を真剣に貫徹し、科学的発展観を全面的に実行に移し、社会主義調和社会の構築を速め、引き続きマクロ規制を強化、改善し、経済構造の調整と成長パターンの転換や、資源節約と環境保護の強化、改革開放と自主的創造革新の推進、社会発展の促進及び民生問題の解決に力を注ぎ、経済・社会の発展が確実に科学的発展の軌道に乗るように推進し、国民経済の良好で急速な発展の実現を目指して努力し、党の第十七回全国代表大会の開催に向けて望ましい環境を創り出さなければならない。
上述の要請に則り、それと同時に必要性と可能性も考慮に入れ、さらに「第十一次五ヵ年計画要綱」と結び付けて検討した結果、次のような二〇〇七年度の経済と社会発展の主要目標をうち出した。
――構造の最適化やパフォーマンスの向上、資源消費の減少、排出の削減を図った上で、適正な経済成長スピードを維持する。第三次産業とハイテク産業の占める割合を引き上げる。歳入は四兆四〇六五億元、GDPの成長率を八%前後とする。ここ数年、GDPの成長率はいずれも一〇%もしくはそれよりやや高い水準を保っているが、今年度は経済成長の所期目標の設定にあたって適度なゆとりを残しておいた。これは政府の規制の意図を全社会に伝達することにより、各方面が活動の重点と留意点を確実に経済構造の最適化や成長パターンの転換、質とパフォーマンスの向上に置くよう誘導し、成長スピードばかりを追求してそれを盲目的に競い合うのではなく、経済の良好で急速な発展を図ることがねらいである。経済成長の目標は所期的かつ指針的なものであるため、各地方も現実に立脚した上で、当地の総生産の成長率を合理的に定めるべきである。
――都市部の新規増加の就業者数を九〇〇万人以上とし、都市部の登録失業率を四・六%以内に抑える。今年は就業情勢がかなり厳しいものの、経済が持続的でテンポの比較的速い成長を保ち、雇用創出政策の効果もいっそう顕在化しているため、この目標の達成に向けて努力すれば実現可能であろう。
――都市部住民の一人当りの可処分所得及び農村住民一人当りの純収入の実質伸び率はそれぞれ六%とし、社会消費財小売総額の伸び率を一二%とする。国家財力の継続的増強、企業効率のさらなる向上、所得分配制度の改革、さらに社会主義新農村の建設、農民の収入増の促進、社会保障と貧困脱却扶助の強化など諸措置の実行にともない、都市・農村住民の収入は持続的に増えていくことになろう。但し、都市部低所得層及び農民の収入増大についてはなお多くの困難や制約要素にぶつかることが予想されるため、この目標の達成に向けて多大な努力を払わねばならない。
――消費者物価総水準の上昇率を三%以内とする。これは主に次のような要素を考えたうえで定めたものである。すなわち、資源関連生産物の価格改革を積極的かつ着実に推進すること、公共財・サービス関連の価格を調整すること、さらに昨年末の食糧・食用油など農業・副業生産物価格上昇のラグ的波及効果、これらはある程度、物価の総体的水準を押し上げることになるだろうということである。
――科学技術、教育、医療衛生、文化などの諸事業をさらに発展させる。国内総生産(GDP)に占める研究と試験開発経費支出の割合を一・五六%まで引き上げる。高等学校段階の粗入学率を六五%に高め、高等教育機関の計画募集人数は大学生五六七万人、大学院生四二万四〇〇〇人とする。公共文化サービス体系の整備を一段と強化する。新しいタイプの農村合作医療テストの対象範囲を全国の八〇%以上の県(市、地区)まで拡大させる。人口の自然増加率を七・五‰以内に抑える。
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